追悼 小澤征爾先生
小澤征爾先生のご逝去の報に接し、胸が張り裂けそうな思いでおります。
1978年、先生は私の「二泉映月」の演奏をお聴きになられた後、二胡を世界に広めることを決意され、中央音楽学院の院長を説得して私が日本に留学できるように道筋をつけて下さいました。日本留学は、私の人生の転換点となりました。
二胡の普及のために、先生は積極的に二胡の作品を委嘱され、新たな二胡の可能性を創造するべく、私を励まして下さいました。演奏会では、この中国の楽器について、外国の方々にもわかりやすいようにと、自ら紹介もして下さいました。
私が一人日本で寂しく過ごしていた時期には、小澤先生ご一家の皆様に親しくお付き合いさせていただき、可愛がっていただきました。そのご厚情のお陰で二胡の道を究めて行こうと決意を固め、幸運にも今日まで歩んで来ることができました。
2007年、東京での生活を一区切りして教鞭をとるために母校の中央音楽学院に戻ったとき、先生はとても喜んで、私の帰国記念のお祝いとして、2008年北京国家大劇院新年音楽会で自ら中国国家交響楽団を指揮して「十里墩山歌」を私と共演して下さいました。
コロナ禍の続く中、体調を崩された先生のお見舞いもなかなかできない状況でしたが、昨年、幸いにもお見舞いすることが叶い、先生の耳元に、今までの感謝の言葉をお伝えすることができました。しかし、これが最後の思い出となりました。
先生は二胡を世界に広めた開拓者であり、私の大恩人です。
先生と過ごした日々の情景は、今でも目の前にありありと浮かびます。そして先生の思い出は永遠に私達の胸に生き続けてゆくでしょう。
小澤先生のご冥福を心よりお祈りしています。